通読:ブラジル民衆本の世界

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通読:ブラジル民衆本の世界

(今日の枕)
 NHKを国営放送という表現をする方がいらっしゃいます。正式には公営放送だっけ? 公共放送だっけ?
 これは日本人にはNHKを国営としてとらえておきたい心情があるにちがいない。逆に言えば、公営というものに馴染んでいないということですね。
 そういえば、日本人に真の〈公〉はない、という論を読んだことがあったような。
 まぁ、昨年のNHK騒動について国会で叩かれている風景などを見れば、国営だと思われても仕方ないとは思うんですけれど。

■最近の通読
ブラジル民衆本の世界増補版
「ブラジル民衆本の世界 コルデルにみる詩と歌の伝承」著:ヨセフ・M.ルイテン/訳:中牧弘允ほか/刊:御茶の水書房/面白度:★★★★☆/1990年1月・増補版2004年7月(増補版詳細情報・楽天ブックス利用旧版詳細情報・楽天ブックススペース用画像

○どんな本?
 19世紀から花開いたブラジルの民衆本という文化について、全般的に語った一冊です。
 欧州における民衆本の登場に始まりブラジルの発展具合といった簡単な歴史から、戦時・戦後の民衆本における表現での日本の扱われ方、1980年代のブラジルでの民衆本の扱われ方などが図版やテキストを豊富に引用しながら紹介されています。

 民衆本とは、歌いあげられてきた詩を記した小冊子です。多くは定型詩の形式に従っており、似た節で高唱することができる内容になっています。

○気になるフレーズ
(44頁)「また長いものほど、扱われている内容も一層興味深いと考えられていた」

 我々が触れる昨今の読み物を見ていると、「長ければ良い/面白い」という図式はあまり聞かないことです。
 それだけにこのフレーズは記憶に残りました。
 民衆本は、生活に苦しい庶民層に属す著者が書いて刷って売っていることが多いそうです。それだけに長い小冊子は作られることは少なく、たいてい8ページ、16ページ本が多いそうです。
 この背景を考えれば、長い冊子=強く伝えたいことがある=興味深い内容が成り立ちやすいことも理解できます。

(97頁)「また字の読めない人が、市で小冊子売りが物語を朗唱するのを聴き、話に興味をもって家で誰かに読んでもらうために一部買い求めるということもある」(下線はたまねぎ須永)

 ブラジルは識字率の低い国でした。
 それでもお気に入りの物語に興味を持つ……。

○ここが素敵
 小冊子の表紙に用いられた木版画の数々が収められていますが、それが何ともいいがたい雰囲気を出しています。

○そして、こう思う
 ブラジル――そして、そこに影響を与えてきた西欧での民衆本のあり方・役割を知ることのできる一冊です。
 聖書の印刷に始まる、ヨーロッパでの印刷技術の発達が生み出した、庶民の文化 民衆本の存在をこの本で初めて知りました。
 識字率の低い庶民層に本は無縁だと思っていたのが恥ずかしいのです。

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このページは、tamasunaが2005年6月12日 23:02に書いたブログ記事です。

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