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2−1(ダリア・ダリアの物語)


 ガルデンの街は、占領直後と比べればかなり治安も回復したものの、まだまだ治安の悪い地域もあった。戦による難民の発生によるスラムの発生である。とある古買商の屋敷もここにあった。そして、今回ダリアが狙いをつけたのもここだった。
 何点か見繕い、屋根裏に戻る。部屋にはダリアとは入れ違いに赤茶色の女性が入ってきた。噂のグレーヌ姫のようだ……。
 なんとなく……、何となくいやな感じがした。背中が寒くなるような、そんな感覚。
 天井から姫と思われる女性を見ていたダリアはそう感じた。
 持ち前の好奇心がうずき出す。それに対応し、警戒心もよみがえる。
(バカ、ヤバいことには首を突っ込まないんでしょ)
 しかし昨日、アイツに言われた言葉がこだまする。
(夢はね〜のか、夢は)
 軽い調子の言葉であったが、アイツは本心だったのだろうか。見抜いていたのかもしれない。
 ダリアが天井裏での葛藤を打破ったのは、階下から聞こえる声だった。低く抑えた声なのだが、盗賊が天職たるグラスランナーにはどうということもない。
「ようやく、レジスタンスの奴等がわしに食らい付いたわい。これで計画の第1段階は完了じゃな。本物の“私”を知るものを消していけば安心して、ガルデンの神なる力を我がものとすることができる……。クックックックック……」
 ダリアは耳を疑った、今のはいったい?  女性は深い緑色の液体を取り出し、一気に飲み干す。
「ん〜〜、まずい。この維持液ももう少し味を考えるのだったな。さて姫を待つ頼もしい仲間もいることだし、着替えるとしましょうね」
 姫の口調に戻しながら、女性はドレスを着替えている。やがて着替え終わり、となりの部屋へ移っていく。それを追い掛けてダリアも移動する。
「グレーヌ様、ご無事で何よりでした!」
 若い男の興奮した声が聞こえた。男はやがて、姫をレジスタンスに迎えることについて、詳しく語り出した。

「何やら鼠がいるようじゃぞ。わらわは鼠が嫌いじゃ、殺してたもれ」
 この言葉を聞いたときには遅かった。退屈な話を聞きすぎ、少々油断していた。姫と呼ばれる女性に気付かれるとは……。
 気が付くと、追手はもういなかった。が、パンダナは破れ、赤い髪が風になびいていた。


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