通読:物語の結婚

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■今日の見出し
・最近の通読:物語の結婚

(今日の一言)
 PHS電話機でアラーム機能が作動するとき、着信表示欄に「アラーム」と表示されます。
 でも、これを「クレーム」だの「イスラム」「アラーブ」などと勘違いしてしまいがちです。
 まぁ、年中寝惚けているというわけですか。

■最近の通読
「物語の結婚」
著:藤井貞和/刊:ちくま学芸文庫・筑摩書房/満足度:★★★★☆/1995年10月(詳細情報 in 楽天ブックス利用

○どんな本?
 奈良時代、平安時代の物語、和歌集といった文学作品を読み解き、当時の結婚事情を切り口に当時の男女のあり方、性的タブー、言葉の変遷などを考察した論文集。

○気になるフレーズ
(12頁)「少女と結婚」
〈結婚を準備しつつあるように肉体から告知され、赤くけがれが来るとき、彼女は聖化されたのである。言いかえれば彼女はタブー(禁忌、taboo)化され、物忌みの生活期間にはいった。彼女たちが物語を必要とし、それに読みふけるのはこの期間であって、そのために、物語の女主人公もまた、結婚直前の苦難に直面している十六歳ぐらいであるばあいが圧倒的に多い。物語の「物」は物忌みの「物」でもあるのであった〉

 平安時代以降の歌物語の読み手と書き手/需要と供給の関係がここに触れられています。
 読み物は、読み手・書き手によって内容がある程度規定されます。そのことを思い起こせば、この指摘は意味があるのです。
 なお、書き手については、次の部分が示唆しています。

(127頁)「日本の性の基層を探る」
〈平安時代の女性文学のかずかずは、そうした整理期間中に里や局にこもったときに書かれたものであろうとしばしば推測されるのは、あたっていよう〉

 〈月のもの〉が来た女性は〈物忌み〉のため、宮から出て物語を記した。それを〈物忌み〉中の若い女性たちが読む。
 書き手・読み手の関係はこうまとめられるのです。

○ここが素敵
 折口信夫氏、金田元彦氏の床離れ三十歳説、三角洋一氏(「歌まなびと歌物語」『国語と国文学』1983年5月所収)の女子の成長段階に関する仮説を元に、次の論が展開されています。

・16歳:結婚の平均年齢 in 「源氏物語」
 (逆算的にこの1~2年前に裳着/社会的成人の儀式が行われる=肉体的成長と関係なく)
・29歳:床離れ1年前で焦る時期
 →「源氏物語」内では、女性に大きな転機が与えられる年齢
・30歳:床離れ
 →夫を若い妻に譲って、自らは(肉体関係から退き)正妻として家庭社会を支える立場に移る

 この論は本書前半の盛り上がり部分です。
「源氏物語」など歌物語を楽しもうとする際に、おさえておくと、年齢の意味がわかるようになり、楽しさが増すのです。

○そして、こう思う
「少女と結婚」「少女の物語空間」あたりは昨今の「萌え」を考える際にも参照しておいてもいいのではないでしょうか。
 今回紹介した部分以外に、「万葉集」を軸とした「愛」という漢語と訓についての論などが収められています。

○読んだ理由
 平安時代もののゲーム作成資料。

(自己管理用スペース)
・今日の体重:80.8kg

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このページは、tamasunaが2005年12月 6日 22:47に書いたブログ記事です。

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